渡邊　佐保

　レジで買い物の清算を済ました後、ふと掲示板の張り紙が目にとまりました。放射能の学習会です。いつもより多くの参加希望者の名前がすでに書き込まれていました。講師は原子力資料情報室代表の山口幸夫氏、私たちの生活圏で直にお話が聞ける絶好の機会です。

　五月十一日当日、二〇余名の参加者が、予定の二時間が過ぎても聴き足らず、場所を移動してまで学習会は続きました。お話は「放射線・放射能の基礎知識」「子どもへの影響」「自分たちにできる対策」というものでした。静かに、それでいて厳しい口調で、今私たちが置かれている状況をわかりやすく説明してくれました。

　原発事故直後、関東地方の人たちは確実に被曝してしまったこと、その後も食べ物などで体内に取り込んだものによる内部被曝が続いていること、乳幼児、子ども、妊婦ほど放射能の影響を受けやすいこと、特に福島原発の近くの県の子どもたちの、これから出てくるであろう影響はいかばかりか。具体的な例として、これからはセシウムとの戦いー「戦い」という表現を山口氏はすぐに「つき合い」と言い直しましたが、いやおうなくつきあっていかざるをえないと言います。甲状腺にセシウムもたまって、人体に悪さをする、がんにはならなくても健康を蝕む、健康被害という言葉で説明しました。これらはチェルノブイリの教訓として語られました。福島第一原発事故直後、福島の子どもたちの強制疎開が、ある会議に出たそうですが、現実には無理ということで、実現しませんでした。

　最後に「自分たちでできる対策」として、やはりチェルノブイリ時にドイツのハンブルグでの調査が資料の一つに使われました。「食べ物に気をつけた人・つけなかった人の内部被曝の違い」で、人体中のセシウムが取り上げられていました。半年間の追跡調査によると、２５０ベクレルずつ、毎月差がついてます。ベクレルとは放射能の量（強さ）の単位で、原子が一秒間に一回壊れるとき、一ベクレルと言い、原子が壊れるとき、放射線を出すそうです。昔々、高校で物理を勉強しましたが、物理の教師から、君は物理などやらなくていいと見放されたことがあります。今だったら少しは意欲がわくかもしれません。

放射能を取り込みにくい食べ物・取り込みやすい食べ物が、話題になりました。資料によると、野菜の安全のトップはトマト、続いてズッキーニ、きゅうり、たまねぎが続いています。ほうれん草には申し訳ないですが、「より注意」のランクにあります。果物ではりんごが「より安全」とあります。参考資料は「ベラルーシの部屋ブログ様より」ということです。インターネットで調べてみましょう。もちろん、安全な地域かどうかはチェックしてほしい、危険な場所のものが関西経由で来ることもあるそうです。

山口氏は、私たちは化学性毒物に加えて、放射能を気にしなければいけなくなってしまったと、何度か繰り返されました。しかたなく歯医者さんで撮るレントゲン写真も断ることができるそうです。そして、若いママの世代の参加がこの学習会の際立った特徴でした。言うまでもありません。この会をこれだけで終わらせないように、またいい取り組みを望みます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１２年５月１４日